御殿場の富士山〔入門編〕
▼箱根側の高台から見た夏の富士山と御殿場市街
白い雪をかぶり、空に向かってそびえる富士山。噴火による大量の噴出物の堆積によって生まれた、いわゆる成層火山であり単独峰でもあるため、周囲どこから見ても円錐形に近い姿をしている──はずである。しかし実際には、見る場所によって思いのほか形が異なっている。
富士山周辺の住民であれば、自分の地域から見た富士山と、そうでない富士山はすぐに見分けがつく。テレビや印刷物などで富士山の写真を目にし、「静岡県の話なのに、山梨県の富士山の写真が使われている!」といったことに気づいてしまうのは「富士山周辺住民あるある」である。
ここでは「御殿場から見た富士山」の特徴として、(1)左右対称に長く伸びた山裾と(2)中腹に大きく口を開けた宝永山(宝永火口)の2つを見ていこう。
特徴1:左右対称に長く伸びる山裾
御殿場ほど左右均等にバランスが整い、なだらかに山裾が長く続く富士山を見られる場所はない。(冒頭の写真参照)
静岡・山梨両県各所から眺めてみると、意外や左右非対称に傾いて見える富士山や、ずんぐりとして見える富士山もある。
なぜ御殿場の富士山は、かくも長くきれいな曲線を描いているのか? つきつめれば、御殿場側から見える範囲に、噴火によって大量の溶岩が流れ、噴出物が降り注ぎ、ぶ厚く堆積したからである。ほとんどの物が埋め尽くされてしまったからこそ、稜線が長く伸び、美しい曲線を形づくっているのだ。
自然災害としてとらえると深刻な問題であるが、標高3,776メートルの日本の最高峰が生まれた数万年単位のできごとである。ひとまず心配せずに、美しい富士山を眺めることにしよう。
昔は箱根外輪山には畑も多く、高台からは大野原と富士山が一望できた。戦後は植林が進み視界がさえぎられたり、市街化もあって富士山を見やすい場所がだいぶ減ったが、それでも国道138号線を箱根方向に登った一部の地点や、平地でも沼田から神山にかけての農道沿いやJR富士岡駅付近、市街地でも建物の上の階などは前方の視界が開けているため、天気がよければ広大な裾野と共に富士山を見ることができる。
特徴2:宝永山
もうひとつの御殿場の富士山の特徴は、山腹に大きく口を開けた
なお、正確に言えば、噴火でえぐれた部分は「宝永
宝永火口は巨大なくぼみ(クレーター)だが、御殿場市街から見ると富士山の稜線の内側に収まっており、なだらかなシルエットが欠けることなく保たれている。
本来の宝永“山”は、火口の手前部分である。火口の“ふち”に見える部分が宝永山である。
御殿場市街から見ると、あくまでも火口の“ふち”であり“山”のイメージはないが、御殿場口新五合目付近から見ると、宝永山の峰が空に突き出ており“山”と呼ぶことに納得がいく。
▼御殿場口新五合目付近から上方を望む
宝永山の峰が空に突き出ている
宝永山も宝永火口も所在地は御殿場市であり、夏にはハイキングが楽しめる。
さらに詳しく知りたい人のために
富士山がよく見える場所と写真
▼富士山絶景スポット!富士山眺望遺産と富士見十二景
https://gotembatourism.jp/%E5%AF...
▼御殿場の魅力:御殿場市政カレンダー採用の富士山写真
https://www.city.gotemba.lg.jp/ap...
宝永噴火関連の書籍
▼御殿場市文化財のしおり第4集 富士宝永の噴火と長坂遺跡(1963年/昭和38年発行)※御殿場市立図書館で閲覧できます。
宝永噴火では、江戸にも火山灰が数センチ積もり、昼でも灯りをともすほど空が暗くなった。特に駿河国(静岡県)駿東郡と相模国(神奈川県)足柄上郡・足柄下郡は大量の火山灰が降り積もり被害は甚大だった。小山町須走では火山灰が3メートルも積もり、2007年(平成19年)に御殿場市中畑で採取された地層からは約1メートルの堆積物が認められた。被災地の復興に尽した関東郡代・伊奈半左衛門(忠順)を描いた小説が、新田次郎の『怒る富士』である。
御殿場口登山道や宝永山をドローンで撮影した動画がこちらのページにあります。
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▼オンラインで富士登山
https://i-gotemba.com/cat/nature/mt_fuji_tozan.php