御殿場之魅力発掘隊

巨大ガニを追え!

御殿場に巨大なカニがいます


【結論】御殿場に巨大なカニがいる!

いきなり結論ですが、御殿場に巨大なカニがいます。下の写真は死骸ですが、甲羅の幅が約7.5cm、足を広げると約20cmです。
モクズガニ(藻屑蟹)というカニで、日本全国のほか、ロシア沿海州、サハリン、朝鮮半島東岸、台湾に生息しています。御殿場ではズガニや毛ガニと呼ばれてきました。(以下、ズガニと記載します)
御殿場では生息している川が限られるため、知らない人も多いかもしれませんが、知っている人は知っている存在です。

ズガニは9月頃から翌年6月頃が産卵期間で、海岸や汽水域(河口付近で淡水と海水が混じり合う場所)で卵を生みます。卵からかえった小ガニは夏に川をさかのぼります。川で3年程度すごして、成長すると秋から冬にかけて産卵のため川を下り海へ戻ります。
つまり御殿場のズガニは、子どもの頃に海からやってきて、大人になるまで御殿場の川で暮らしているのです。

トラブル防止のため今回の記事では具体的な地名を伏せますが、この川の流域では昔はズガニをごく普通に食べていたそうです。昭和ひとケタ生まれの方の話では、夜に懐中電灯を持って河原に行くと、ズガニがたくさんいるので次々と袋に放り込んで持ち帰り、大鍋でグラグラと茹でて食べたそうです。
また近年でも、趣味のような感じでズガニを獲っている人はいて、カニの出汁(だし)で食べるそばはおいしいそうです。

静岡県内の近場では、伊豆方面の旅館でズガニ料理を出しているところがあります。御殿場でも地元食材と言えるかもしれませんが、そこまでの規模はないため、現時点では知っている人は知っている程度にとどめておいたほうがよいのかもしれません。

第1証言者・Aさん

冒頭のズガニの写真を撮影したのは御殿場市内在住のAさんです。7月に自宅裏の草刈りをしていたところ、ズガニの死骸を発見。昔、自宅裏の川で獲れたズガニを食べたことはあるものの、最近では珍しいなと思い、発見状況を撮ったそうです。
生きているズガニは黒色をしていますが、全体的に白色化しており、死後かなり日数が経過しているようです。

自宅裏を草刈り中に発見

Aさんによると、自宅裏を大きな川が流れていて、そこからカニが這い上がってきたのではないか。あるいはそれ以外にも小さな水路があるので、水路づたいにやって来たカニが草むらにまぎれ込んだのではないか、とのこと。甲羅が割れて真ん中に穴が開いているのは、カラスに突かれて絶命したのではないか、と推測していました。

ズガニをつかまえた!

その後、衝撃的なニュースが飛び込んできました! Aさんがズガニの死骸を発見したことを近所の人たちに話したところ、Aさんの3軒隣(川の上流方向に3軒)のBさんが、自宅裏の小川にしかけておいた「もじり」というワナで、1週間前(10月)にズガニを捕まえたというのです。

そこで急きょ調査隊を編成し、現場へ直行しました! メンバーは ヘリコプター遊覧飛行 の動画でおなじみ、第34代富士娘の菊地理江さん、芹澤春香さんの2名です。実際にズガニを見つけるのが今回の目標です。

第2証言者・Bさん

さっそくBさん宅に到着。ズガニを捕まえたという、自宅裏の小川に案内してもらいました。しかし「大自然の中」といった感じの場所ではありません。住宅が建っています。庭はアスファルトで舗装されています。周囲に田んぼや畑はありますが、御殿場では一般的な住宅地といってよい場所です。ここにズガニがいるのでしょうか?

住宅地にズガニが生息している?

家の裏の小川

金網と竹でつくった「もじり」

家の裏はコンクリートではない自然に近い感じの小川が流れていて、1週間前にズガニを捕まえた時の「もじり」をしかけてありました。「もじり」とは、細く割った竹を円錐状(ロート状)に並べて、先をすぼめた入口をつくり、カゴの中に入ったカニや魚が出られないようにしたワナです。
Bさんによると、ためしに小川にもじりをしかけておいたとのこと。1週間前は雨で水量がもっと多く、ズガニが1匹かかっていたとのこと。小さかったので逃がしてあげたそうです。

竹でつくったもじりも見せていただきましたが、10年以上前に自宅裏の大きな川にしかけておいたところ、ズガニが2~3匹かかったそうです。ズガニは秋から冬にかけて川を下るので、もじりを上流に向けてしかけておくと、エサは無くてもズガニがかかるそうです。

以上のような状況で、「ズガニなら、普通にいるよ」的な証言が得られました。

竹製のもじり

Bさん宅の小川は、田んぼのための農業用水路で、上流から流れてきているので、さかのぼってみることにしました。

第3証言者・Cさん

ズガニを捕まえた人が、もう一人いるというので話を聞いてみました。Aさん、Bさんの上流の畑で野菜づくりをしているCさんです。7月頃に野菜に水をやろうと道路わきのコンクリートの側溝に目を向けると、黒い物を発見。よく見るとズガニだったそうです。

こんなコンクリートの側溝にズガニがいたのか!?と驚きましたが、水路はつながっています。ズガニが移動してたどりつくことはあるでしょう。Cさんは両手で形をつくって大きさを説明してくれましたが、大人のズガニだったようです。手にとってみたあと、そのまま水路に戻しておいたそうです。

発見現場のコンクリートの側溝。「これくらいの大きさで……」と説明するCさん

Aさん宅、Bさん宅の小川、Cさんの畑のコンクリート側溝は、水の流れでつながっています。これらの水は、さらに上流の水門が起点になっているそうです。そこで水門まで足をのばすことにしました。

第4証言者・Dさん

ここが水門です。この日は都合で立ち会っていただけませんでしたが、3年ほど前にDさんが水門にはさまっている(ひっかかっている)ズガニを発見したそうです。

水門の説明をしておくと、大雨が降ると大量の水が下流に流れてあふれることがあるため、堰板(せぎいた)を上下させて水量を調整するのが水門です。上部のハンドルを回転させると金属製の堰板が上下します。堰板と水路の間を水が流れますが、間隔が数センチでズガニの体の厚みより少し狭かったのでしょう、上流からやってきた(流されてきた?)ズガニがはさまっていた、ということのようです。

水門の堰板の下にズガニがはさまっていた

水路は続き、さらに上流の水門につながっているそうなので、先へと歩いてみました。

上流を目ざします

探険ぽくなってきました

歩きました。けっこうハードな道のりでした

幅約5メートルの川に出ました

ここにも水門があり、今まで見てきた水路に水を分岐しています。この水門から入り込んだズガニたちが水路を下り、4件の目撃・捕獲証言につながったと思われます。

川底に大きな岩があって、いかにもズガニが生息していそうな雰囲気です。あたりを見まわしましたが、この日はズガニを発見できませんでした。ちなみに、この川は中程度の支流で、海へつながる大きな川は別にあります。

ズガニが入り込んだと思われる水門

水門のすぐ下は水が流れ落ち、段差2メートルほどの滝になっています。その下はコンクリートの平坦な川底なので、流れが速いと押し流されそうです。しかし、ズガニはコンクリートの壁を登ることもあるそうなので、きっと海から障害を乗り越えてやってきているのだと思います。

これくらいの段差は乗り越えてズガニは海からやってきているのでしょう

残念ながら生きているズガニを目にすることはできませんでしたが、目撃証言は多数あるので、発見のチャンスはきっとあると思います。今回は、この川の水門にたどりついたところで終了です。

探索いったん終了

【続く】かもしれない?

補足説明:ズガニはいるのに、なぜ知られていない?

見てきたように「御殿場にズガニは普通にいます」。しかし、それを知っている人が少ないのは、なぜか? 第1証言者のAさんは個人の意見として、次の2点をあげてくれました。ちなみに、ここでいう川とは、御殿場市内でも大きな某川のことです。

(1)ズガニが生息しているのが、御殿場市内の一部の川とその支流であり、場所が限られること。
そしてもうひとつは、
(2)川に降りることが無くなった(河原に降りる必要が無くなった)こと

Aさんが子どもの頃、小学校にプールができる前は、夏になると近所の子たちが川で泳いだそうです。今ではコンクリートの川底が増えていますが、以前は自然石の場所が多く、小学校低学年の子供でも、場所を選べば石の上をびょんびょんと飛んで、向こう岸に渡れる場所があったそうです。

そもそも以前は簡単に川に(河原に)降りることができる場所があったとのこと。川岸の一部が川に降りやすいような地形になっていたり、護岸された場所も自然石の丸い石を組んだ石垣が多く、手や足をかけて子供でも上り降りできたそうです。また以前は川底がもっと浅く、降りる距離も短かったそうです。
昭和40年代から工事が進み、表面が平坦に近いコンクリート製の護岸に置き換えらえて、簡単に降りられる場所が減ったとのこと。

昔は今のようには橋が整備されていなかったため、明治時代くらいまでは川の浅い場所をざぶざぶと渡って向こう岸まで横切っていたという話もあり、そういった名残りもあってか昭和40年代くらいまでは、川が身近な存在としてあったそうです。子どもが遊びや、大人もためしにもじりをしかけるようなこともあったわけです。その後、そういった川との関わりも希薄になっていきました。

そのため、昔と同様に川にズガニはいるものの、近所の人でもズガニに気づかない。一部の興味を持っている人だけが知っている、という状態になったのではないか、とのことでした。

また、同じ御殿場市内でも昔は、大きな川が流れている地区と、そうでない地区では「文化」というか、生活習慣もやや違っていたとのことでした。

【関連ワード】モズクガニ,みくりやそば,川口浩探険隊
(ページ公開:2023/03/14)
TOP
Δ